福田研究室では,実解析・測度論を基盤として, 非加法的測度,メビウス変換, Choquet(ショケ)積分を中心に研究を行っています。 従来の「確率・積分」の枠組みを拡張し,あいまいさや相互作用をもつ評価を 数学的に記述・解析することが主なテーマです。
高校や学部で学ぶ測度・確率では,集合 A と B が重なっていないとき
(A ∩ B = ∅)には
μ(A ∪ B) = μ(A) + μ(B)
という加法性が成り立つことを仮定します。
しかし,現実の評価や意思決定では,
といった理由で,単純な足し算では表現しにくいことが多くあります。 このような状況で使われるのが 非加法的測度(capacity, fuzzy measure など) です。
福田研究室では,特に次のような性質に注目しています。
これらの性質を組み合わせることで, 非加法的測度を扱いやすくする「基礎理論づくり」を進めています。
有限集合上の集合関数 μ に対して,
メビウス変換は
m(A) = ΣB⊆A (-1)|A|-|B| μ(B)
のような形で定義される「係数の取り換え」です。
フーリエ変換が「時間領域」と「周波数領域」を結ぶのと同じように,
集合関数を別の座標系で見るための道具と考えられます。
m(A) が 0 になる集合の大きさを制限すると,
k-加法性 のような性質を簡潔に表現できる通常の積分は,確率測度(加法的)に対する平均値と見ることができます。 Choquet 積分は,これを非加法的測度に対して拡張した積分で, 「重み付き平均」でありながら,
などを表現できるのが特徴です。
これらの理論は,もともと 意思決定・ファジィ理論・協力ゲーム などで用いられてきたものです。 研究室では,こうした応用とのつながりを意識しつつも, 次のような「基礎に近い問い」に取り組んでいます。
こうした問題に取り組むことで, 「あいまいな情報」「相互作用のある要因」を扱うための 新しい解析学の枠組みを作ることを目指しています。
※ 数式を含むより詳しい説明や,最近の研究成果については, 「業績(日本語)」「Publications (English)」のページもあわせてご覧ください。