研究分野のご紹介

福田研究室では,実解析・測度論を基盤として, 非加法的測度メビウス変換Choquet(ショケ)積分を中心に研究を行っています。 従来の「確率・積分」の枠組みを拡張し,あいまいさや相互作用をもつ評価を 数学的に記述・解析することが主なテーマです。

1. 非加法的測度(Non-additive Measures)

1-1. なぜ「非加法的」なのか?

高校や学部で学ぶ測度・確率では,集合 AB が重なっていないとき (A ∩ B = ∅)には
μ(A ∪ B) = μ(A) + μ(B)
という加法性が成り立つことを仮定します。

しかし,現実の評価や意思決定では,

といった理由で,単純な足し算では表現しにくいことが多くあります。 このような状況で使われるのが 非加法的測度(capacity, fuzzy measure など) です。

1-2. 研究の視点

福田研究室では,特に次のような性質に注目しています。

これらの性質を組み合わせることで, 非加法的測度を扱いやすくする「基礎理論づくり」を進めています。

2. メビウス変換(Möbius Transform)

2-1. 集合関数のフーリエ変換のようなもの

有限集合上の集合関数 μ に対して, メビウス変換は
m(A) = ΣB⊆A (-1)|A|-|B| μ(B)
のような形で定義される「係数の取り換え」です。 フーリエ変換が「時間領域」と「周波数領域」を結ぶのと同じように, 集合関数を別の座標系で見るための道具と考えられます。

2-2. 何がうれしいのか?

2-3. 研究テーマ

3. Choquet 積分(Choquet Integral)

3-1. 「重み付き平均」の拡張

通常の積分は,確率測度(加法的)に対する平均値と見ることができます。 Choquet 積分は,これを非加法的測度に対して拡張した積分で, 「重み付き平均」でありながら,

などを表現できるのが特徴です。

3-2. 研究の方向性

4. 応用と今後の展望

これらの理論は,もともと 意思決定・ファジィ理論・協力ゲーム などで用いられてきたものです。 研究室では,こうした応用とのつながりを意識しつつも, 次のような「基礎に近い問い」に取り組んでいます。

こうした問題に取り組むことで, 「あいまいな情報」「相互作用のある要因」を扱うための 新しい解析学の枠組みを作ることを目指しています。

※ 数式を含むより詳しい説明や,最近の研究成果については, 「業績(日本語)」「Publications (English)」のページもあわせてご覧ください。